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湊かなえ「望郷」より「みかんの花」原作小説の結末と感想

「望郷」を読みました。「望郷」は瀬戸内海のある島を舞台にしたお話です。

1話目は「みかんの花」というタイトルでみかん畑が出てくるお話でした。主人公の姉は高校在学中のある日、島を出て行ってしまってその25年後から話が始まる。

 

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みかんの花の結末

みかんの花の主人公は、25年前、自分の姉がよそからやってきた若い男性と駆け落ちしたと信じていたが、実際にはその若い男性を殺してしまった母の罪をかぶる形で島を出て行き戻ってこなかったのだと知る。

最後の1文は、

さようなら、お姉ちゃん。

主人公は、認知症の始まっている母の言葉から、25年前の真相を知った。姉は25年前の告白をしながらもなお核心では嘘をついていたことを悟り、姉にはそれを知らせず黙っていることに決めた。

 

みかんの花の感想

湊かなえさんの小説にわたしは、おそらくすぐに感情移入してしまいます。みかんの花も短編ではあるのに、読み終わると長い時間がたった後のような気がしました。

小説の中の瀬戸内海の島・白綱島は、のどかで気候が良いけれど狭く閉じた社会である田舎として描かれていて、田舎に暮らしたことがあるなら自分のことによく置き換えられる表現がとても多いのだと思います。田舎コンプレックス感とかどこでも共通していそうです。

作者の湊さんは因島出身だということだから、白綱島によりリアリティがあるからかもしれません。

そこには濃い関係で結ばれた家族がいて、その家族はなかなか客観視することなんてできない、自分の一部です。そのように思っているのに、主人公と家族の間には、長い間思いもかけなかった秘密がありました。

主人公は、出て行ったきり何の連絡もない姉を勝手だと思っていたし、自分たちを捨てたのだと思っていたわけで、あたたかな歓迎の気持ちなどありえない状態でした。なのにやはり、25年前の真相を知った主人公は、言葉にすることなくあっさり受け入れて自分の秘密にしてしまうのです。

姉は、埋めた死体が掘り起こされるのではないかと心配して島に帰ってきたことも、母の罪を被ることにして島を出ていくことにしたとっさの判断も、勝手といえば勝手にも思えるし、25年間犯行がばれすにきていること、作家として成功していること、秘密を共有し守ってくれる同級生がいることはすごいしうまくいきすぎている。だけれど、静かに隠されている犯罪と白綱島ののどかで美しい自然環境の中のさびれゆく田舎描写とのギャップが、なんとも居心地の悪さを強調しているようで、この気持ち悪さがまた湊かなえさんの小説なのだと思うのでした。

 

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