湊かなえ「望郷」より「雲の糸」原作小説の結末!蜘蛛ではない理由
クモノイトという音から連想するのは、あの古典「蜘蛛の糸」であるが、湊かなえさんの小説「望郷」の中には「雲の糸」という短編がある。
この物語の中の雲の糸とは何か。そして結末は。
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「雲の糸」の結末
黒崎ヒロタカは目覚めた時に病院のベッドにいて、姉が付き添っていた。ヒロタカは、姉に叱られ、母が父を刺して殺人犯となってしまったのは、母に対するDVが理由ではなかったことを知る。泥酔して手を付けられなくなっていた父に首を絞めて殺されそうになっていた1歳の自分を必死で守ったやむを得ない行動の結果だったのである。母はそのことをヒロタカに知られたくないと思い口止めしていたためヒロタカはそれまで知ることがなかった。
ヒロタカは殺人犯である母を恥ずかしく思っていて母のことを隠し、人殺しの家族として自分たちを冷たく扱かった島を嫌い遠ざけていたが、これからは胸を張って島に帰ってきてコンサートも開くと宣言する。
「雲の糸」の意味
雲の糸は、空からロープのように降りてきて別世界へ連れて行ってくれるとヒロタカが子どもの頃想像した飛行機雲のこと。
小学2年生のころ真っ青な空に伸びた一筋の白い飛行機雲を見て、いつか雲がロープのように降りてきて自分を違う世界に連れて行ってくれるのではと考え、姉に話すと芥川龍之介の「蜘蛛の糸」じゃないかと言われ、発想がかぶっていると知ったというエピソードから。
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感想
母の父刺殺事件は、ヒロタカが1歳に起きたものでヒロタカには事件の記憶はない。記憶にある限り差別的にいじめられた忘れてしまいたい子供時代。
ヒロタカは人気歌手になった。そういえば望郷の1話目のみかんの花でも姉が人気作家となっていた。白綱島は才能のある人がたくさんいるなあ:)
湊かなえさんのエピソードや描写にわたしはいつも主人公目線になってしまう。今回もすっかりヒロタカ目線になってしまった。それまでさげすんでいたくせに有名になったからって急に友達ぶったり、恩を着せたりする人たちにもいかにあるあるな感じがしてうんざりする気分になる。自分のことでもないのにとても不愉快な気分がこみあげてくる。不快なのにこれが湊さんの小説がクセになるところなんだなきっと。。。
そういえば芥川龍之介の蜘蛛の糸も子どもの頃に読んでとても嫌な気持ちになった覚えがある。挿絵も気持ち悪かった。蜘蛛の糸って児童文学なのだそうだけれど、なぜなんだ。そもそもなぜ釈迦がそんなことをするのか。ちっとも悟ってないじゃない。と思ったら西洋人の書いた大本があるそうで、釈迦のキャラ設定おかしいわけだ。
ヒロタカは、子どもの頃、小学2年生ですでに自分の現況を地獄と思っていたようだけれど、そのころにそんな判断ができるなんて考えてみるとかなりおりこうである。
島外に就職してからこの日まで7年も島に帰ってこなかったとはいえ、帰ることができた。そして大切な家族の真実を知り、わだかまりを吹っ切ることができた。日本人のわたしが思う西洋風の考えでいってみると、神はヒロタカに与えたもうた試練と機会であったのかもしれない。ヒロタカはこれから自由で感謝にあふれた世界を生きることになるのだろう。
望郷 [ 湊かなえ ]
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