朝井リョウ「何者」原作小説のラスト結末!あなたに襲いかかる物語とは
朝井リョウさんの「何者」は2012年下半期の2013年1月発表の直木賞作品でした。当時の朝井リョウさんは23歳で、男性としては最年少受賞者でした。
文庫版の裏表紙によると、「ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかるー。」とあるので、楽しみに最初から順番に読みました。
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朝井リョウ「何者」原作小説のラスト結末!
「何者」のラスト30ページでは、拓人が理香に責められている。拓人が裏アカでひそかにみんなをバカにして笑っているといい、拓人についてこう言う。
「この鋭い、自分だけの観察力と分析力で、いつか、昔あこがれたような何者かになれるって、今でも思ってる」
「いい加減気付こうよ。私たちは、何者かになんてなれない」
その後、拓人の裏アカのツイートが並べて表示される。拓人の裏アカの名前は「NANIMONO」。最終章17は、拓人のグループ面接の場面である。拓人は、かっこ悪くても本当のことを話すようになる。
朝井リョウ「何者」原作小説の感想
あなたに襲いかかる物語とは、あなたの中にもあるいろんな顔と知られたくない本音があるってバレてるんだよっていう居心地の悪さでしょうか。
「何者」は、就活する5人の大学生の物語である。仲間に見せる自分、面接で見せる自分、SNSでの発言、人にはいろいろな顔があって当然である、と思う。
裏アカとはいえ、書き残しているし、検索されるようなメアドで登録したアカウントだし、自意識のバランスとでもいうのかな。わたしの読後感はすっきり爽快とは決して言えないですね。自分に重なる部分があってそこが嫌いだからなんでしょう。わたしが今大学生だったら、この自意識過剰感があまりにリアルに感じたと思うけれど、だとしたらもっと違う感想を抱いたんだろうな。「何者」は、世代によってだいぶ受ける印象が違うに違いない。
自分のことを考えても就活は苦しかったですね。自己アピールって就活まで必要ないことだったし、確かに就活は、自分が「何者」であるのかを受ける会社に伝えることだったんだなあ・・・今さらですが。
そして「何者」かになれるって思っていたかもしれないですね。もはや思い出すのも難しいくらい毎日に追われているな 笑
一斉に集団就職しないといけない環境ってどうにかなんないんですかね。それとも日本社会にはあってるシステムなのかな。自己アピールって先ほどは言ってはみたものの、実はどちらかといえば、どのように周りとバランスが取れるかとか、どれだけどんな就活態度が求められているかを理解してそれに合わせられるかとか、そういうことを試されてるってことになりますよね。
演出力のテストだったのかー。
小説の中でとってもよかったセリフは、瑞月が言う、「あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういない」です。
確かにその通りで、でも考えたことなかったです、そんなふうに。
理香は、「自分の努力を実況中継していないと、立っていられない」と言っていたけれど、この気持ちはわからない。世代の差を一番実感した部分です。性格じゃないよね笑
だけど、自分は自分でしかいられないからその姿のままあがく、という理香。そして拓人を自分じゃない誰かになれる場所がないと立ってられないんだよ、といい、だから内定が出ないのだ、と言い切る理香。
就活ってつらいな・・・これは人生で果たすべき修行なのかそれとも性格を歪めるだけの苦行なのか。
中には就活が全く苦にならない人もいるのでしょうね。
次は自分と全く違うそういう人についてぜひ知りたいと思いました。
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おまけ
わたしが購入した「何者」の文庫版は、カバーが2枚かかっていました。冒頭の写真がその裏表紙です。
これは、映画が作られることになったからで、表の表紙はそれぞれこんな感じです。
映画版。
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この表紙を見てしまうと、読んでるときにちゃんと各キャラこの顔になって頭に浮かんでしまいます(笑)
映画版にはこのバージョンもあります。
ふつうの文庫版はこちらのカバーがついています。
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就活イメージ写真ですね。
女子は長い髪ならまとめたほうがよかったような気がしますが、今は違うんでしょうか。
そして、単行本はこの表紙。
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この表紙もいいですね。これがやっぱり一番印象的です。直木賞でしたからね。
「何者」は、2012年に書下ろしで刊行されました。