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有川浩「植物図鑑」原作小説と映画は設定が違う?登場する植物と料理について

有川浩さん作のライトノベル「植物図鑑」は図鑑といったタイトルとはうらはらにとても甘い気持ちになる小説です。
映画の予告編を見たのですが、イメージはぴったり。甘くなつかしい胸キュン感が漂っていて、思わず微笑んでしまいます。でも少し設定が違うような。。。

植物図鑑は純愛物語となっていますが、実は私はそこよりも、作中に登場する植物やそれを使った料理のほうをかなり興味深く読みました。

これまでの人生にこういう発想なかったんですね。

それらを小説の結末と共にまとめてみました。

 

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有川浩「植物図鑑」のあらすじと結末

ある冬の終わりの会社の飲み会があった休日前夜、主人公・河野さやかの前に、ちょっとイケメンな男子が現れます。

その男子は、さやかのマンション前の芝生に一文無しで行き倒れていました。そして、さやかに自分を拾ってほしいと言います。自分は躾のできたよい子だからと。

さやかは、男子を部屋に上げ、カップ麺を振る舞いその夜の宿を提供しました。

翌朝、さやかが目覚めると、男子は朝ごはんを作っていた。日ごろ自炊をしないさやかにとって、その朝ご飯は思いがけず涙が出るほどおいしいものでした。

朝食後、出ていく準備をしている男子に、さやかが言う。行く当てがないのならここにいないかと持ち掛け、ふたりは同居を始めることになります。

ここで初めてさやかは男子の名前を尋ね、男子は樹(いつき)と名乗ります。苗字はキライだからと言いませんでした。


同居に当たってさつきは住環境と生活費の管理権を提供、樹は食費3万雑費1万で1か月家計をやりくりすることになる。とうぜん料理も担当。
樹は料理がとても上手で少ない予算でおいしい食べ物を提供、さつきの弁当も作りました。

さつきは樹の作るご飯を食べることで幸せを感じ、同時に健康にもなっていきました。

樹は近所のコンビニで夜勤のアルバイトを始めます。

ある週末から、樹の誘いでふたりは散歩に行くようになります。
樹は植物に詳しく植物の写真を撮り続けていました。
さつきは家でダラダラ派で最初はしぶしぶ出かけたものの、今回もまた思いがけずさつきの楽しみとなるのでした。

散歩でふたりは季節の野草を採取し持ち帰って料理をしておいしくいただきます。

街育ちで今も街に住むさやかにとって身の回りに食べられる野草があること自体発見でした。

さやかと樹は、お互いの気持ちを伝えることなくしばらくはただの同居人として暮らします。

そんなある日さつきは思わず樹の勤務するコンビニを訪ね、ふたりはけんかになってしまいます。次の日、樹と顔を合わせないよう早く家を出て、退社後は飲み会出てから帰ると駅に樹がいました。

そしてついにふたりは結ばれます。

ふたりはしばらくの間幸せに暮らすのですが、コートがないと通勤できない季節が訪れた月に2回しかない資源ゴミの日、樹はさつきの前から忽然と消えてしまったのでした。

ごめん。またいつか。

とだけ書かれた一筆箋を残して。

いっしょに3枚の写真と料理レシピのかかれたノートも置かれていました。

樹を忘れられないさつきは樹との思い出をたどりながら日々をすごしました。そしてまた春が来て夏がやってきました。すると1通の書留が。

差出人はさやか本人になっていて、中には部屋の鍵と

ごめん。待たなくていいです。

と書かれた一筆箋が。

それでも、待ちたいだけ待とうとさやかは決めました。
樹と一緒に作ったノートの料理を練習しながら。

季節は廻り、やがてまた冬の終わり、休日前の朧月夜。

初めて樹と出会ったときのような夜に、樹は戻ってきました。

樹は自分の身上を明かし、さやかにプロポーズ。

ふたりは共に人生を歩むこととなりました。

 


設定の違い

小説の中で二人が出会ったのは、冬終わりかけの朧月がでている休日前夜。終電で帰ってきたところだから、夜中です。

映画では、雪が降る夜ですね。

それから小説では次の日にさやかが樹に同居を持ち掛け、同居計画を話し合うのですが、期限は設けていません。

しかし、映画では半年ほどと樹が最初に期限を言っています。

樹が突然いなくなってしまうとき、期限がついていなかったからこそ、さやかにしてみれば予告なく訪れたものです。期限がないことは反面、いつ終わりになるかわからないというとても不安定なものでもあるのですが。あえて期限発言が入った映画ではこのあたりはどういう風に変わるのか楽しみです。

 

登場する植物

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植物図鑑には、街の中の道端や家の庭や公園や川原などに生えている多くの植物が登場するのですが、わたしが読んだ文庫版には巻頭に写真が載っています。
その写真分を取り合えず挙げてみますね。

 

ツクシ
シロツメクサ
レンゲ
フキ
タンポポ
オオイヌノフグリ
フキノトウ
ノビル
コメツブツメクサ
ヘクソカズラ
セイヨウカラシナ
アカツメクサ
ナズナ
ヒメジョオン
スカシタゴボウ
ノイチゴ
ハルジオン
イヌガラシ
イタドリ
スミレ
ワラビ
スベリヒユ
ハナミズキ
ネジバナ
イヌビユ
アカザ
ニワゼキショウ
クレソン
ヨモギ
ニワゼキショウ
ユキノシタ
アップルミント
ハゼラン

冒頭のエピソードでは、ヘクソカズラが登場します。どんな花かわかりますか?
ヘクソって屁と糞のことなのだそうで、とっても臭いにおいがする植物。にもかかわらず、花は白とえんじの可愛らしいもの。
夏に塀やフェンスなどにつる草が絡みついてたくさんの花が咲いている様子を実は目にしているかもしれません。

ツクシタンポポが食べられるとは聞いたことがあるけれど、食べたことはありますか。
わたしはなかったけれど、この本を読んで、一度くらい食べてみたいと思ってしまいました。
ツクシは処理が面倒らしいですよ。

フキ、フキノトウ、ワラビなどは食べていても、身の回りで採れるとは思わなかったな。

ノビルやセイヨウカラシナはたくさん生えていると書いてあったので、思わず探してしまいましたね。
まあ、どれかは見分けがつかなかったのですが。

それにしても、道に咲く花や草に少なくとも興味を抱くようになりました。
興味をもってみてみると、実にいろんな植物が生えています。

植物物語の映画の視覚デザインのモチーフにも使われているクローバーの葉なども場所によって色や形が少しずつ違っていたりしてとっても可愛らしい色と形なんだなって再認識したりして。

花冠が出てきますはが、わたしは作ったことがあります。これっていい思い出なんですね。だけど確か素材はシロツメクサだけで、お花が小さくてたくさんのお花が必要で、出来上がったころにはなんだかクタッとしていて、ちょっと残念に思った記憶が。。。

これを水に浮かべると生き返ってくるっていうのも知らなかったな。巻きつけた茎の部分がつぶれちゃってるような気もするけど。。。

草が生えているところには虫もいる、というイメージがあってなんとなく近づきたくなかったけれど、この本を読むと、そんなことは気にならなくなっちゃいました。

これからもしかすると街の中を歩く野草観察&採取ツアーなんていうおが流行るかもしれませんね。
川原のフキとかって持ち帰ってもいいのかな。

 

登場する料理

本の中では持ち帰った野草を料理して食べるのですが、そのうちのいくつかのレシピが巻末に載っています。

フキの混ぜごはん
ノビルのパスタ
タンポポの茎の炒め物、葉っぱの炒め物、葉っぱのおひたし、花の天ぷら
ヨモギのチヂミ
ヨモギの油揚げサンド

本の中では、ノビルのパスタがとってもおいしいらしいです。
ぜんぜんどんなのかわからないけれど、食べてみたいものです。

野草も食べられるものと食べておいしいものっていうのがあるのだそうですよ。

他に本の中で気になったのは、イヌビユスベリヒユのお料理。
イヌビユはゴボウに似ているそうで柳川風で出てきました。
スベリヒユはからし酢味噌和えでぬめりがあると書いてありました。

 

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感想

植物図鑑は最初は携帯小説サイトから始まったそうです。
本になっても、改行が多くて、口語表現で、とてもあっさり読めてしまった、と思っていたのに、実は中にはずいぶん多くの植物情報や料理情報が詰まっています。

それとともに少女コミック風の女の子の細かい心情がたくさん書かれていて少女のような気恥ずかしいような気持ちにもなります。

有川浩さんのあとがきによると、テーマは、「女の子の旅と冒険」と「リアル落ち物女の子バージョン」なのだそうです。
ある日女の子の前にイケメンが落ちてくる、という。

ううう。

さやかの設定は27歳のOLでアダルト場面も出てくるんだけどな。
映画では、15禁になるのでは、なんてうわさされてましたよね。これでもライトノベルなのかな。

ちょっと昔っぽく言うと樹は白馬に乗った王子様ってことなのかな。
行き倒れだったから違うか。。。

今は王子様じゃなくてもっと現実的な身の丈に合ったパートナーが理想ってことかな。

有川浩さんの本ということと、映画化されるということと、それから表紙のイラストがステキでこの本を手にすることになりました。ふだんならこの分野の本を読む機会はなかったことでしょう。

この本はライトノベルと分類されていて、確かにストーリーや文体はライトノベルのものなのだろうけれど、予想に反して野に咲く植物という意外な視点の詳しい知識がよく書かれていて、不思議な気持ちになりました。読後感はハッピーです。

有川さんの本はハッピーになれる身近なファンタジーってジャンルがあったらそれだと思います。

 

 

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